野鳥の体の部位解説(1)翼に生えている羽の名称と特徴
はじめに
野鳥の羽に着目して観察すると、雌雄の識別や特定の個体の同定など楽しさが広がります。
そこでこの記事では、まだまだ野鳥観察初心者の筆者自身の勉強も兼ねて鳥の羽の名前についてまとめていきます。今回は翼にある羽の特徴や名前に着目します。
翼の羽の大まかな分類
大雑把にいって、鳥の翼の羽は「風切(かぜきり)」と「雨覆(あまおおい)」の2種類があります。
「風切」は翼の後方(尾の方向)に並ぶ長い羽で、空を飛ぶ時の力を出します。風切羽の外側は人間の指のようにも見えます。「雨覆」は翼の前方にあって風切羽の根元を覆う短い羽です
「風切」「雨覆」にはさらに細かい区分があります。翼の中央あたりを境に、翼の先の方を「初列」、胴体側を「次列」といいます。こちらは次に詳しく説明します。
この他にも「肩羽」や「小翼羽」もあります。
風切羽(かぜきりばね)
翼の後方にある長い羽、「風切」はさらに「初列風切」「次列風切」「三列風切」に分けられます。これらの部位の分かれ目は翼の中央付近、翼の輪郭をひらがなの「へ」だと見立てた時の曲がり角です。
初列風切(しょれつかぜきり)
翼の中央付近の折れ目から外側に並ぶ羽です。この羽が羽ばたきの際に飛翔力を生みます。中央から順に「P1」「P2」と外側に数えていきます。
次列風切(じれつかぜきり)
翼の中央から胴体の方に並ぶ羽です。中央から順に「S1」「S2」と内側に数えていきます。初列風切とは数える順番は逆です。
三列風切(さんれつかぜきり)
次列風切よりもさらに胴体に近い部分に並ぶ羽です。
雨覆(あまおおい)
翼の前方、風切羽の上の方に生えている短い羽です。風切羽は一枚一枚が区別できますが、雨覆羽は短い羽の集合で滑らかに見えます。この羽の役割はいくつかあると考えられていますが、飛翔の推進力となる風切羽を守る役割があると考えられています。「初列雨覆」「大雨覆」「中雨覆」「小雨覆」に分けられます。
初列雨覆(しょれつあまおおい)
初列風切の上の方を覆うように生えています。部位の分かれ目は風切羽と同じように、翼の中央付近の折れ目に対応しています。
大雨覆・中雨覆・小雨覆
これらの羽は次列風切を覆うように順番に生えています。大雨覆が次列風切の上に、中雨覆が大雨覆と初列雨覆の上に、小雨覆が中雨覆の上に来ています。
肩羽(かたばね)
次列風切や大雨覆などよりもさらに胴体側の羽です。翼を閉じた時、人間であれば肩甲骨あたりに生えています。
野鳥を観察し始めたばかりのころ、鳥類図鑑に出てくる「風切(羽根)」という言葉が鳥の体のどの部分を指しているのかわからず困りました。いろいろな本を読んで調べてみると、鳥の体が想像していたよりも細かく名付けられていて驚きました。考えてみれば人間にだって「くるぶし」とか「もみあげ」とかいろいろな体の部分があるわけですから、鳥の体にも同じように名前があってもおかしくないですね。