はじめに

児童文学の中には動物が主人公のすぐれた物語がたくさんあります。その中でも、1954年に発表されたこの『ながいながいペンギンの話』は、戦後児童文学を代表する作品だと思います。作者のいぬいとみこさんは数少ない資料をもとに、ペンギンの兄弟の物語を想像しました。それまでの幼年童話は短くたわいのないものばかりでしたが、いぬいさんは擬人化ではなくリアルな基礎にたった楽しい童話をつくれば、たとえそれが長かったとしても子どもたちに受け入れられるだろうという信念を持っていました。
出版までの問題を乗り越えて、1967年に愛蔵版が出版されて以来、この作品は長く人々に愛されることになりました。

「ながいながいペンギンの話」の目次とあらすじ

  • 第一のおはなし くしゃみのルルと さむがりやのキキ
  • 第二のおはなし ルルとキキの うみのぼうけん
  • 第三のおはなし さようなら さようなら にんげんさん!

このお話はアデリーペンギンのルルとキキの兄弟の話です。何にでも積極的なルルは外の世界に憧れて、お母さんのいうことなんて聞かずに、どんどん冒険に出てしまいます。すこし臆病な弟のキキもそんなお兄ちゃんに引っ張られるようにして、南極の海へと飛び出していきます。

第一のおはなし くしゃみのルルと さむがりやのキキ

生まれたばかりの子ペンギン、ルルの大冒険です。一人で雪原を歩き出したルルを数々の困難が襲います。凍えているところ拾ってくれた人間のことも「しらないペンギン」だと思っています。お母さんペンギンはルルがいなくなって大騒ぎです。人間の船に乗ってしまったルルはどうなるのでしょうか。

第二のおはなし ルルとキキの うみのぼうけん

少し大きくなったルルとキキが氷山に乗って流されてしまいます。シロナガスクジラのこどものガイと出会ったり、皇帝ペンギンの国に行ったりと大冒険をしながら故郷の国を目指します。シロナガスクジラのお母さんの聡明さが印象的なお話です。

第三のおはなし さようなら さようなら にんげんさん!

大冒険を経験したルルはみんなと一緒に泳ぎの練習をするのがバカらしくなって拗ねています。そんなある日大カモメの大群がペンギンの学校を襲います。九死に一生を得たペンギンたちのもとに、昔ルルを救ってくれた鯨とりの人間が訪れます。ルルは人間と一緒に南極を去るのでしょうか。

感想

南極の厳しい寒さや捕食者の恐ろしさを隠さずに描いています。挿絵もなんだかリアルです。そんな厳しい自然の中でもルルとキキは自分たちの可能性をこれっぽっちも疑わずに大冒険に出ていってしまうのです。

危険な目に遭って、お父さんから「そとへいっちゃいけない」と言われても、

「いくとも。もうすこし大きくなったら、ぼくまた、ひとりで、出かけるんだよ。」

と、懲りるどころか、外の世界への期待を膨らませます。

ルルとキキのこんな姿を見ると、胸のすくような思いがします。
外の世界には確かに危険がたくさんありますが、それは成長することで乗り越えられるし、助けを求めれば周囲も手を差し伸べてくれるのだという作者のメッセージを感じます。自然の(人生の)厳しさと面白さは両立しうる物なのだということを楽しく描いていることが、この物語が長く愛されている理由ではないでしょうか。

南極の寒いあらしの風から友達を守って、ペンギンのかたちをしたゆきだるまのようにならんで立っているルルたちの姿が誇らしく見えてきます。