小笠原諸島の生きもの 2019
はじめに
この記事は、2019 年 2 月に小笠原諸島に旅行に行った時に出会った生きものの記録です。
おがさわら丸に乗って父島を目指すところから、時系列で書いていきます。
目次にそれぞれの章で出てくる生きものの名前を書いているので、興味のあるところから読んでください。
目次
- #1 小笠原諸島行きを決めた理由
- #2 おがさわら丸
クロアシアホウドリ、ザトウクジラ - #3 父島の道端の生きもの
メジロ、ザトウクジラ、キョウジョシギ - #4 小港海岸のオカヤドカリとヤギ
ムラサキオカヤドカリ、ノヤギ - #5 初寝浦海岸の赤ぽっぽ
アカガシラカラスバト、オガサワラヒヨドリ - #6 ジョンビーチへ向かう
アノール - #7 雨の中のブリーチング
クロアシアホウドリ、ザトウクジラ - #8 母島の生きもの
ハハジマメグロ、オガサワラトカゲ、キョウジョシギ - #9 小笠原を去る日
イソヒヨドリ、タコノキ、ヤセタマカエルウオ - #10 おわりに
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小笠原諸島行きを決めた理由
私はそれまでも、伊豆諸島が好きだったので、アルバイトをしてはお金を貯めて何度も島に行きました。そして、今回の小笠原諸島行きでは、それまでにない明確なテーマがありました。
それは、小笠原諸島母島の固有種、「ハハジマメグロ」を見ることです。
野鳥が好きになるにつれて、図鑑に載っている鳥がひとつずつわかるようになってくると、いつかは会ってみたい鳥が出てきました。その中の一種類がハハジマメグロでした。母島にしかいないハハジマメグロを見に行くには、最低でも 1 週間の休暇が必要です。
これは学生時代に行っておかなければということで、友人と誘い合わせて、小笠原を訪れることを決めました。
おがさわら丸
場所:太平洋上
生きもの:クロアシアホウドリ、ザトウクジラ
2019 年 2 月 19 日、浜松町の竹芝桟橋からおがさわら丸は出港しました。24 時間の船旅です。
船の中では特にやることがないので、お酒を飲んだり、展望デッキから夜の海や星を見たりして過ごしました。
翌朝、起きるとすぐに船外に出てみました。
360 度見渡す限りの海です。東京から数百 km 離れた太平洋上では、あたりまえですが陸地なんて見えません。
9 時ごろになると、いよいよ父島が近づいてきました。無人島の聟島が見えてきます。
すると、1 羽のクロアシアホウドリがおがさわら丸についてきました。
海面近くを飛んでいました。
もうそろそろ父島に着くというとき、船の前方にブロウが上がりました。
2 頭のザトウクジラです。
冬には南の海へ向かうクジラたちが小笠原諸島の近くを通るようです。
この章で登場した生きものの詳細
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
父島の道端の生きもの
場所:父島
生きもの:メジロ、ザトウクジラ、キョウジョシギ
父島の港の近くは少し賑わっています。生垣や人家の庭にはヒヨドリやメジロなど、お馴染みの野鳥が沢山います。
地面に降りてきたメジロです。
私たちは父島での移動手段として原付をレンタルしていました。
これで、坂の多い島を自由に走り回ることができます。
父島北西部にある Weather Station 展望台からは、遠い海面にザトウクジラの家族が沢山見えました。
この季節の日中であれば、展望台からザトウクジラを見ることができます。
二見港の近くの海岸ではキョウジョシギが歩いていました。
この章で登場した生きものの詳細
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
小港海岸のオカヤドカリとヤギ
場所:小港海岸
生きもの:ムラサキオカヤドカリ、ノヤギ
私たちの宿は二見港からバイクで 25 分ほど離れた小港海岸の近くでした。価格のリーズナブルさで宿を選んだので、商店のある港から遠く、少し不便なこともありました。そうはいっても、バイクで父島の海岸線を走るのは爽快だったので、私たちは何かと理由をつけては港までバイクで出かけて行ったのでした。
小港海岸は父島の南西側にあり、とても静かなところです。夕方になると、周遊バスも終わってしまって人がほとんどいなくなります。
海岸までの小道を歩いていると、茂みから「パキパキ」と何かが動く音が聞こえてきました。地面をよく探してみると、ムラサキオカヤドカリが歩き出していました。
人間に気づくと、素早く殻に潜り込んでしまいました。
海岸線に沿って歩いていると、崖にノヤギがいました。
このヤギは昔、食用に放牧されていたものが野生化したものだと言われています。ノヤギによる森林の破壊を防ぐために、ジョンビーチへと行く道の途中にはノヤギよけの柵がありました。
日暮れが近づくと、ノヤギの家族は稜線の向こうに行ってしまいました。
この章で登場した生きものの詳細
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
初寝浦海岸の赤ぽっぽ
場所:初寝浦線歩道
生きもの:アカガシラカラスバト、オガサワラヒヨドリ
父島には至る所に自然公園があります。
私たちはそのうちのひとつ、長い砂浜のある初寝浦海岸までの歩道を歩きました。この歩道は島の東側を走る夜明道路沿いから入り込む道です。二見港から離れておりまったくと言っていいほど人がいません。
鬱蒼とした林道をしばらく歩くと、200m 下の海岸へ降る長い階段に差し掛かります。冬でも半袖で過ごせるほど暖かい父島では、ここまで歩くだけで少し暑いくらいです。
帰りの登りの大変さを思いながら降っていると、10m ほど下の階段に黒っぽい大きな鳥が現れました。
島の人々から「赤ぽっぽ」の愛称で親しまれているアカガシラカラスバトです。頭から首にかけてのグラデーションが美しい鳥です。
この鳥はカラスバトの亜種で、人為的に持ち込まれたノネコなどに捕食されたことで、一度は絶滅の危機に瀕しました。現在は個体数を回復してきていますが、無闇に驚かしてはいけないので、私たちは遠くから静かに観察しました。
木の上に飛び上がってじっと私たちを見つめていました。
初寝浦海岸は誰もいないプライベートビーチでした。長い砂浜と東島との間に早く荒々しい潮の流れが見えました。
私たちはしばらく海を楽しむと、もと来た長い登り坂を帰り始めました。
林道の途中ではメジロをはじめとする野鳥たちが、人間への警戒心が薄いのか、かなり近くまで寄ってきます。
少し大きな羽音がすると思って見上げてみると、オガサワラヒヨドリがとまっていました。
この章で登場した生きものの詳細
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
ジョンビーチへ向かう
場所:父島海岸線歩道
生きもの:アノール
小港海岸の横から、父島の南西にあるジョンビーチという海岸を目指して歩きました。往復で 4 時間ほどかかり、アップダウンもある道のりです。
高台から見た小港海岸です。
道中はオガサワラビロウの木がたくさん生えており、果実もそこら中に落ちていました。
時々草むらがガサガサいうので、トカゲや昆虫がいるのだろうと思っていました。そして、とうとう見つけたのは、茶色のアノールでした。
アノールは戦後父島で見つかった外国産の爬虫類で、人為的に持ち込まれたと考えられています。小動物や小笠原の固有種オガサワラトカゲの生活を脅かしています。
世界自然遺産に登録された小笠原諸島では、林道の入り口に靴についた外来生物を取り除くためのマットやスプレーなどが整備されており、本来の自然を保護する取り組みが行われています。
ジョンビーチはまさに最果ての海岸といった様子でした。
少し寒かったのですが、せっかく来たので泳ぎました。
想定したより長い道のりで、帰りに飲み水がなくなりそうになるなどのハプニングがありましたが、なんとか戻ってくることができました。
写真は撮れなかったのですが、帰り道にオガサワラノスリの姿を見ることができました。
雨の中のブリーチング
場所:ははじま丸
生きもの:クロアシアホウドリ、ザトウクジラ
ジョンビーチまで歩いた翌日は、早起きをして母島に行きました。念願のハハジマメグロが見られるので楽しみにしていたのですが、朝から厚い雲が立ち込めて怪しい天気でした。
ははじま丸が出発すると案の定雨が降り始めて、高波の飛沫も降りかかってきて体を濡らします。
私はこの父島ー母島間でなんとかして海鳥を見たいと思っていたので、悪天候の中デッキに出てチャンスを窺っていました。
出港して 30 分ほどたち、ほとんどの乗客は船内に入ってしまった頃に、1 羽のクロアシアホウドリが姿を現しました。
強風を物ともせず、海面すれすれを飛んでいました。
しばらくそのクロアシアホウドリを撮影していると、突然、船の左後方でブロウが上がりました。
これまでとは比べ物にならないほど近くにザトウクジラが寄ってきていたのです。
荒れている海の中に尾鰭が沈んだかと思った次の瞬間に、ザトウクジラが飛び出してきました。
垂直に近い角度で半身が飛び出てきて、大きな音を立てて海面に倒れ込みました。
ドーンという音が響き、大きな水飛沫が上がりました。
一瞬の出来事でしたが、間近で見たザトウクジラの迫力は忘れられないものになりました。
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母島の生きもの
場所:母島
生きもの:ハハジマメグロ、オガサワラトカゲ、キョウジョシギ
母島に着港すると、運の良いことに雨が止んでいたので、私たちはまた原付をレンタルして島内を散策しました。
まず向かったのは島の南端、南崎海岸です。
タコノキが生茂る林道に入っていくと、そこは鳥たちの楽園でした。
いたるところからメジロやウグイス、そして念願だったハハジマメグロが飛び出してきます。
初めてみるハハジマメグロはメジロより黄色がかって見え、その名の通り目の周りに黒い三角形がありました。
手の届きそうな枝を飛びまわります。
数え切れないほどの小鳥に囲まれた不思議な場所でした。
南崎を後にした私たちは島の北端にバイクを急がせました。帰りの船の時間までには港に帰らなければなりません。
カーブの多い山道を 30 分ほど飛ばすと、北港につきました。人気のない荒凉とした海岸です。
海に近づくと足元がガサガサするので、またアノールかと思って目をやると、それはオガサワラトカゲでした。
岩の上ででじっとしているとこを観察すると、トカゲなのにまぶたを持っていることがわかりました。
10 分程度休憩すると、船の時間に追われて、もと来た山道を帰り始めました。
無事、帰りの船の時間に間に合い、港を走るキョウジョシギなどもみることができました。
この章で登場した生きものの詳細<
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
小笠原を去る日
場所:父島・二見港
生きもの:イソヒヨドリ、タコノキ、ヤセタマカエルウオ
いよいよ帰りの船に乗る日がやってきました。
乗船時間までの間、二見港の近くを散策しました。
海際では陸に上がってきたヤセタマカエルウオを見つけました。
※2022/10/06 修正
元々は「トビハゼ」として掲載していましたが、タマカエルウオではないかとご指摘いただき、修正いたしました。
滞在中に見慣れたタコノキも名残惜しいです。
港の近くを飛び回っている鳥は、よくみるとイソヒヨドリのメスでした。
小笠原では所々でイソヒヨドリに出会いました。
人家の近くにいたオスです。
この章で登場した生きものの詳細
別ページで特徴や生態、発見したときの状況などをまとめています。
いよいよ出港というところで、地元の人たちが見送りに出てきてくれました。
どんどん島が遠くなっていきます。
おわりに
4 日間の滞在中にたくさんの生きものを見つけることができました。
いつになるかはわかりませんが、小笠原の風景をもう一度見にいきたいと思います。